ドローン海外情報 溝部 公憲

【JDAメールマガジン第055号 2021年8月04日掲載】

[ 未来のドローン教育]

我々日本ドローン協会の事業の柱の一つでもある「教育」ですが、海外ではドローン教育の未来をどう考えているのか気になりませんか?

今日はアメリカのセントメアリーズ大学の取り組みをお話しします。

ここでは、ドローンのデザイナー、オペレーター、プログラマーとしての仕事に就くための新しい工学学位プログラムを導入しています。

同大学のコンピュータ/ソフトウェア工学の助教授であるDante Tezzaはこう言います。

「ドローンというとアマゾンの配達を想像する人が多いことを知っていますが、ドローンの能力はそれだけではない。農業分野では、ドローンが土壌中の水分を正確に測定することで、農家が水を節約しながらより良い作物を収穫できるという研究結果があります。病院では、移植手術のための臓器を、救急車よりも早く施設間で運ぶことができました。ドローンは、建物、橋梁、大型船、煙突の点検作業にも利用できるのはご存知の通りです。私たちがカリキュラムを作成した時、学生がこれらの分野のいずれにも従事できる基礎を身につけるために、幅広い分野に焦点を当てました」

業界の成長に伴い、学生たちは、今月開始される新しい学位プログラムにより、ただ勉強して終わりではなく、きちんと仕事に就く準備ができることになります。日本の数ある講習団体でも、修了証明書は取得するけど、その後に仕事に結びついているのはごく少ないのが現状です。

この大学のようにの新しい仕事に焦点を当てている学校はまだ非常に少ないので、この新しいプログラムはそのための準備段階であり、アメリカにおいてもこの分野は、まだ始まったばかりだとも言います。

このプログラムの内容は、無人航空機システムを専攻したエンジニアリング・サイエンスの学士号で、ドローンを一から作ることから、ドローンを操作するためのプログラムやアプリケーションを開発することまでを学ぶものです。また、FAA(米連邦航空局)のドローン操縦士試験に備えて、各学生は操縦クラスも受講します。

教室での学習に加えて、ドローン専攻の学生と他の専攻の学生は、3月にオープンした広大なラボを利用できます。広さ160平方メートル高さ82メートルもあるのこのラボでは、学生が研究や授業の課題、プログラムのテスト、ドローンの操作などを行うことができます。すでに学生たちは、飛行中に何か問題が発生したときにパラシュートを展開してドローンを安全に着陸させる緊急警報システムを開発しています。

因みに我が日本ドローン協会でも、先月福島ロボットテストフィールドにて、この手のパラシュート実験に成功したところです。

日本の未来のドローン教育を考える上で大事なことは、ドローンを使った仕事に就くための総合的なカリキュラムを用意することと、学生達が考えたプログラムのテストが容易にできる場所だと思います。

勿論アメリカと違って日本は土地が狭いので、場所の確保が難しいのは理解できますが、過疎化が進んでいる地方や北海道等には、まだまだ活用出来る土地は沢山あると考えています。

国がリーダーシップを発揮した今後の環境作りに期待したいと思います。

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