地域の特性を生かしたドローンの普及拡大に向けて 宮田 敏美

【JDAドローンマガジン 2022年9月7日掲載】

JDA北海道の根室より宮田です。
3回に分けて寄稿致しました最終稿です。

1 飛行免許制度への期待

ドローン操縦者にとって大きな転換期が訪れた平成27年12月の航空法改正からドローンが無人航空機、操縦者を無人航空従事者と定義付されて6年9ヵ月が経過しました。そして、7年を迎える本年12月には、遂に念願の飛行免許制度の運用が開始され、国家資格となり、一定の社会的地位も確立されることとなりました。

有資格者の誕生で、ドローンの需要を取り巻く日本社会は黎明期から日本経済を支える急速な成長期を迎えることになるでしょう。

2 温暖化による地球規模の異常気象 

北海道知床沖で発生した海難事故の捜索状況を踏まえて、地元ではドローン活用の必要性と機運が高まりました。一方で地球温暖化の影響により、全国各地で発生する自然災害は、現代の私たちにとってこれまでに体験したことが無い大規模なもので、被災地住民の生命、身体、財産に深刻な事態を招いており、その復興には大変な人力と費用が注がれております。この様な現状の中で防災に携わる官公庁の皆様にとっては、『想定外の災害』が禁句とされている中、あらゆる災害の発生に対応する秋の防災訓練が全国各地で実施されておりますが、その訓練にドローンが十分に参加されていない現実を残念に思います。  

3 官民一体となったドローン運用の実現を目指して

(1) 緊急用務空域と特定適用者

無人航空従事者の教育と育成に携わっている者の一人として、飛行免許制度が開始される来年度の防災訓練には、全国各地で空中ドローンと水中ドローンが華々しく登場して、罹災状況調査や捜索活動に高い評価を受ける姿を見てみたいと思っております。そのためには、まず、昨年改正された『緊急用務空域』航空法第 132 条の3及び同法施行規則等の適用を受けて無人航空機を飛行させる場合の関係規定や運用ガイドラインに精通することが前提で、その上で、国若しくは地方公共団体又はこれらの者の依頼を受けた者として『特例適用者』に指定なり、選定なり、認定される事が最初のハードルだと思います。

(2) 飛行免許の取得と飛行実績の積み重ね

ア 上位飛行免許証を取得すること。
飛行免許制度が運用された後は、上位の飛行免許取得の有無が大きく左右します。車で例えますと、大型特殊免許証を取得していないと、工事現場では大特の運転も作業も出来ないし、作業の依頼も来ないと言うことです。 

イ 飛行実績の積み重ね
そのために、航空法で定められている3つの飛行禁止空域と6つの飛行禁止方法の内、DID地区、夜間飛行、目視外飛行等の必要な国交大臣の飛行許可・承認許可の交付を受けて、日々たゆまぬ飛行実績を積み重ねて操縦技術の向上、スキルアップを図ることが涵養になります。防災担当の職員もATTIモード飛行訓練10時間以上そして、50時間以上の飛行実績を目標としており、緊急用務空域を申請して、自ら特定適用者になる訓練を行っております、

(3)  『特例適用者』への認定

特定適用者に関する具体的な人的基準については、現段階では何ら示されておりませんし、全国の各自治体共通の同一基準がある訳でもありません。結局のところ、私たち一般私人が特定適用者の認定を受けるためには、前述のとおり、上位飛行免許の取得と国交大臣の許可・承認申請取得に裏打ちされた飛行実績を踏まえて、地元自治体にいかに信頼されて評価されるかにかかっております。

そして、災害発生時のドローン飛行による協力体制について協定書が締結されれば、地元に貢献することが出来るドローンの普及が図られるものと思っております。

4 終わりに

今後、飛行免許制度の開始で、登録管理団体の活動も大きく変動されますが、新たにドローンの活躍の場が広がる布石になるものと思います。ドローンに携わる私たちが第一人者として関係法令を適正に運用して地元におけるドローンの普及拡大に努めて行きたいと思います。