ドローン×農業 日高 雄一郎

【JDAドローンマガジン 2022年9日9日掲載】

皆さんこんにちは。
JDAアグリフライヤー 認定教官 のJokerこと日高と申します。

7月の終わりに、埼玉県上里町にてドローン散布と手巻き散布の実証実験を行いました。

本実験はこだま青年会議所さんが主体となって実施され、JDAの散布チームはもちろんドローンサイドの散布を実施し、地元の高校生や先生方も見学にお越しいただきドローンによる農薬散布をご見学いただきました。
実証実験の詳細についてはこれからこだまJCさんがまとめに入りますが、今回使用した農薬から考察した手撒き散布とドローン散布の違いをいくつかご紹介いたします。

今回使用した農薬は「ブラシンジョーカーフロアブル」で、住友化学が製造する殺虫殺菌剤です。
いもち病に優れた治療効果と予防効果があるとされ、イネ病害虫の基幹防除剤としての効果もあります。散布用ドローンはおなじみAC101を使い、今回は散布面積も少ないことから2名体制で実施しました。

「ブラシンジョーカーフロアブル」製品説明書によると、希釈倍率は航空防除で「8倍」、手撒き散布だと「300〜1000倍」とされています。
害虫対策として散布する場合は濃度を高めに設定しますので、今回は手撒き300倍で実施されたかと思いますが、実に37.5倍の違いがありますね。
航空防除はいわゆる「濃い農薬」を散布することになりますが、なぜ濃度の差があるのでしょう。
それは後述の散布の高さ・一度に散布する回数に秘密があります。

ドローンによる航空防除の場合、作物上2m程度の高さで散布します。
対して手撒き散布の場合は作業者が手でノズルを持ちますから、作物上端からの高さでいうと数十センチ程度の高さで散布することになりますね。
手撒き散布の写真をみると作物の上端から30cm程度の高さになるでしょうか…ドローンで散布する場合はこの作業者の頭上さらに1.7m上を飛行して散布することになります。

高さが異なるということは散布の幅も当然変わってきます。
AC101は散布幅が5m、手撒き散布だと散布幅だけでいうと10〜15mくらいはありそうなので「あれ?手撒きのほうが広い?」となりそうですね。
ただ、手撒きで散布する際は何度も何度も同じ場所へ散布することになります。

先ほど書いたように、手撒きはドローンに比べて散布濃度が薄いので、1回撒いただけでは不十分。
この実証実験でも同じ場所で何往復も散布方向を変えながら、少しずつ少しずつ移動して散布を行っていました。

対するドローンでの散布は基本的に「1箇所1散布」です。
一度ドローンが通ればその場所は「散布完了」、20km/h程度で散布することになりますから時間あたりの散布量も多いし、なにより「一定」に散布できます。
手撒き散布は前述の通り何度も往復して散布しますから「ムラ」も当然出ることになります。

なお、今回の散布エリアでドローンの所要時間は飛行時間でいうと5分程度だったかと思います。
移動を除いた現地での準備を含めても30分かかっていないかもしれません。
私たちが帰る頃、手撒き散布チームは「まだまだこれから」といった状況ですから、いかにドローンでの散布効率がいいのかが分かりますね。
収穫後の状況も比較されると思いますので、詳細な結果が出た際はまた改めて皆さんにご紹介いたします。

今シーズンも終わり、いよいよ収穫時期になりますね。
皆さんが今月後半〜来月くらいに食べるお米に、ドローンが活用されているお米があるかもしれません。いつもおいしい食事をいただけるありがたさとともに、ドローンのテクノロジーが少しずつ生かされていることも実感してみてくださいね。