地域の特性を生かしたドローンの普及拡大に向けて 宮田 敏美

【JDAドローンマガジン 2022年12月28日掲載】

二等無人航空機操縦士実地試験実施細則回転翼航空機(マルチローター)

JDA北海道の根室より宮田です。

12月5日からドローンの飛行に関して国家資格となる免許制度が開始されました。試験の種別は、飛行目的に応じて第1等、第2等免許に分かれております。もちろん、これまでと同様に、飛行免許を取得していなくても、航空法や関係諸法令に違反しない範囲での飛行は可能です。しかし、筆者は、ドローン免許は取得すべきと考えます。

何故かと言いますと、例えば、農地等の一般交通の用に供していない道路外でトラクターを運転して農作業を行う場合には、運転免許証を取得していなくても無免許運転にはなりませんが、実際には皆さんが運転免許を取得しております。それは、運転に必要な知識と技能を修得して安全に配慮しながら運転作業を行うためです。ドローンの飛行は車の運転よりも遙かに細心の注意力が求められます。車は運転中に故障すれば止まるだけですが、ドローンの故障は即墜落して他人を巻き込むおそれがあるためです。特に、業務としてドローン飛行を行う場合の飛行免許は必須条件と言えます。国家試験の内容は国交省から二等無人航空機操縦士実地試験実施細則回転翼航空機(マルチローター)が発表されました。

そこで今回は、国家試験とはどのような内容なのか確認して見たいと思います。試験は、身体検査と学科試験と実地試験が行われます。その中で一番身近となる第2等免許の実地試験の内容をお話しします。

1 スクエア飛行

(1) GNSS(ON)、ビジョンセンサー(ON)の状態で機首を前方に向けて離陸を行い、高度 3.5 メートルまで上昇して5秒間のホバリングを行う。
(2) 試験員が口述で指示する飛行経路及び手順で直線上に飛行する。機体の機首は常に進行方向を向いた状態で移動をする。
(3) 移動完了後、着陸を行う。
※ 判定基準
・ 試験員の指示通りの飛行経路及び手順であること。
・ 所定の飛行経路を維持でき、飛行経路から 1.5 メートル以上逸脱しないこと。
・ 操作は柔軟円滑であり、急激な操作を行わないこと。
・ 飛行経路及び高度が大きくふらつかないこと。
・ 適切な速度を保つことができること。
・ 所定の範囲で、安定したホバリングを行うことができること。
・ 所定の範囲に安全な着陸を行うことができること。
・ 所定の制限時間以内に、飛行を完了させること。

2 8の字飛行

(1) GNSS ON、ビジョンセンサー ON の状態で機首を前方に向けて離陸を行い、高度1.5メートルまで上昇し、5秒間ホバリングを行う。
(2) 機体の機首を進行方向に向けた状態での8の字飛行を、連続して二周行う。
(3) 8の字飛行完了後、着陸を行う。 円直径は約5メートルとする。
※ 判定基準
・ 試験員の指示通りの飛行経路及び手順であること。
・ 所定の飛行経路を維持でき、飛行経路から 1.5 メートル以上逸脱しないこと。
・ 操作は柔軟円滑であり、急激な操作を行わないこと。
・ 飛行経路及び高度が大きくふらつかないこと。
・ 適切な速度を保ちつつ、機体を停止させて旋回させることがないこと。
・ 所定の範囲で、安定したホバリングを行うことができること。
・ 所定の範囲に安全な着陸を行うことができること。
・ 所定の制限時間以内に、飛行を完了させること。

3 異常事態の発生時の飛行

実技試験の2つ目は機体の水平方向の位置安定機能に不具合が生じて異常事態が発生した際の飛行を想定しており、GNSSとビジョンセンサーをOFFにして飛行を行います。前回のスクエアや8の字飛行ではなく、左右の直線飛行とホバリングの試験です。いわゆる各種の安全センサーが不能に陥った異常事態を想定した中で、安全な飛行の継続と着陸ができる技能を有しているかを判定されます。

(1) GNSS OFF、ビジョンセンサー OFF の状態で機首を前方に向けて離陸を行い、高度3.5メートルまで上昇し、5秒間ホバリングを行う。
(2) 試験員が口述で指示する飛行経路及び手順で直線上に飛行する。機体の機首は常に前方を向いた状態で側方への移動を行い続ける。
(3) 試験員からの緊急着陸を行う旨の口述指示があり次第、最短の飛行経路で指定された緊急着陸地点に着陸を行う。
※ 判定基準
・ 試験員の指示通りの飛行経路及び手順であること。
・ 所定の飛行経路を維持でき、飛行経路から 1.5 メートル以上逸脱しないこと。
・ 操作は柔軟円滑であり、急激な操作を行わないこと。
・ 飛行経路及び高度が大きくふらつかないこと。
・ 適切な速度を保つことができること。
・ 所定の範囲で、安定したホバリングを行うことができること。
・ 所定の範囲に安全な着陸を行うことができること。
・ 所定の制限時間以内に、飛行を完了させること。

以上が第2等免許の実地試験の項目になります。100点の持ち点からの減点式採点法で70点以上で合格になります。

4 ATTI モード訓練の重要性

近年のドローンは、各種の危険回避センサーが高度化されて初心者でも簡単に飛ばすことが出来る様になりました。しかし、それは、操縦者の力量ではなく、ドローンが飛んでくれているに過ぎません。「簡単じゃん!」と感じる心持ちが大敵なのです。私がスクールで受講者の皆様方に学んでいただく最初のことは、「飛ばすのは簡単!だけど操縦することは、とても難しい!」と言うことなのです。

実際に飛行訓練を積んで行きますと、そのセンサーが周囲の環境等で突如として切れる場合があります。その様な異常事態が発生した場合でも慌てることなく、高度を維持したままで操縦技術を駆使して飛行を継続したり、安全な場所に着陸させる技術が求められる訳で、試験内容の項目もそこに重点を置いたものと言えるでしょう。車の運転に於ける「ひやり・ハット体験」と同様にドローンの飛行も順風満帆な飛行だけではなく、幾多の飛行困難な場面を体験するべきと言えます。それらの一つひとつの積み重ねが「経験」となり、スキルアップに繋がるのです。今回の添付写真は、扇風機で強風下を再現した中でMavic air2による物件投下訓練時の写真です。

次回は、試験対策に必要な A モード:ATTI モードと訓練方法についてお話ししたいと思います。