地域の特性を生かしたドローンの普及拡大に向けて 宮田 敏美

【JDAドローンマガジン 2023年3月29日掲載】

皆様こんにちは。JDA北海道の根室より宮田です。

私は、オホーツク海に面した日本最東端の地で自学とDスクールを運営しておりますが、海岸線を覆っていた流氷も沖合に去って、やっと春の兆しが見え始めました。いま、当校の技能教習コースでは教習車の運転ではなくて、その上空で修了検定のドローンが次々に飛行している変な光景が見られます。今回は、当スクールの座学講習にも取り入れているお話しを参考までに皆様方にお伝えします。

2022.2.24から突如として戦闘状態になったロシアによるウクライナ侵攻で、すっかりダークなイメージが強まったドローンですが、本来、無人航空機は近代戦における有効な兵器の一つとして開発され、過去には中東シリア内紛の空爆にも使用された歴史がありました。当初は、軍事目的で開発された技術が人類発展のために民生転用されることを「スピンオフ」と言います。現在では、私たちの身近にあるインターネット、携帯電話、電子レンジ等がこれに当たります。

この様に 「スピンオフ」されたものは、短期間で急速に全世界に普及されますが、一方では電子レンジの様な身近な電気製品でも『取扱いを誤ると人の生命等に重大な被害が生じる・・』と注意喚起されていて怖い一面もあります。実はドローンも同じで誤った取扱いをすれば、人の生命、身体、財産に深刻な被害を及ぼす凶器になってしまうことを十分に理解することが大切です。私たちの身近な自動車に置き換えてお話しを進めますと、戦後の高度成長期は、自動車の普及と共に発展を遂げてもので、私たちは多大なる恩恵を享受して来ました。

しかし、脆弱な交通インフラとコンプライアンス半ばでの急激な増加は、法整備と罰則規定が交通事故抑止とリンクせずに数多くの輪禍を招いて社会問題となりました。現代まで75年間も続く全国交通安全運動週間は、年間死者数1万人を超えていた昭和時代には、「交通戦争」とまで言われた長い戦いの歴史でした。交通事故統計上では、これまでに全国で約4千万件の人身交通事故が発生し、犠牲者は約70万人にもなる驚きの現実があるのです。(内閣府) 

現在、ドローンは、黎明期を過ぎて急速な成長期に入っており、車社会の到来と同じ難しい時代に立っております。運転免許の教習時限と比較して、ドローン免許は、僅か数日間の講習で国家資格の取得が可能になっております。このままでは車社会の轍を踏むことが懸念されます。ですから、これからドローンを飛行される皆様方は、是非、国家試験講習認定団体でドローンに関する関係法令や機体の飛行性能、機体構造、そして、操縦者に課せられた責任等を十分に理解される事が大切になります。

特に、操縦技能に関しては、十分に練習して飛行操縦能力のスキルアップを図って行くことが重要になりなす。さらに、操縦者の責任に関しては、第三者に【危害を及ぼさない安全飛行】を実践する気持ちを持つ事が基本であります。プロの登山家が山頂を目前にして僅かなアクシデントの発生でも登頂を断念しますが、それは、敗者ではなく「勇気ある撤退」と賞賛されます。それは、全員が安全に下山するまでが登山だからです。ドローンも入念なフライトプランを立てたのに、現地に行ったら天候が崩れそうであったり、飛行中に風が強くなってくることは良くあることです。その様な状況になった時、「せっかく来たのだから」、「もう少しで終わるから」と安易に考えたり、無理をすることによって事故は発生します。僅かでも不安な気持ちが生じた場合は、飛行開始を断念し、飛行中であれば、直ちに飛行継続を中止する「勇気ある決断」を行うことがドローン従事者の責任なのです。

全国各地で発生しているドローンの墜落・衝突事故は、決して偶然や突然に起きている訳ではありません。全ては、交通事故と同様で過失論における予見可能性と回避義務の欠如によるヒューマンエラーです。【ドローン操縦者として・・すべき注意義務があるのに・・を怠ったために】の理論が過失責任です。ですから、普段から【大丈夫だろう?】ではなく【危険かも知れない!】の考えを持つ事が事故を未然に防止します。

繰り返しますが、飛行事故は偶然や突然に発生するのではなくて、本来行うべき事前確認や注意義務を怠ったために必然的に発生するのです。長々と親父の説法の様になり恐縮です。これから国家資格にチャレンジされる皆様方は、「無人航空機の飛行の安全に関する教則」を勉強中と思いますが、この教則の教えの基本は、【安全は全てに優先する!】と言うことです。受験時に難解な問題に直面した場合は、この安全のために何が最善かを考えることで、正解が導き出される事と思います。