国家資格実地試験にチャレンジ(その2) 宮田 敏美

【JDAドローンマガジン 2024年6月26日掲載】

皆様こんにちは。JDA北海道ブロック 根室より宮田です。

1 はじめに

皆様こんにちは。前回に引き続き二等無人航空機操縦士試験について解説します。前回までは、実地試験で行われる、机上試験、口述試験(飛行前点検)、実技試験、口述試験(飛行後点検)、口述試験(重大インシデント)の5科目に分かれていることを説明しましたので、今回は、実際に検定用機体を飛行させる実技試験について説明します。採点要領や合否判定基準は、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課から発出されている二等無人航空機操縦士実地試験実施細則と実施基準に基づきます。項目ごとに減点が違いますので参考にして下さい。

2 実技試験の要点

実技試験は、スクエア飛行、8の字飛行、異常事態発生時の飛行を通じて、基本操縦能力を有しているかを判定します。スクエアと8の字は、GNSSとビジョンセンサーはONの状態で行われますので、屋外で多少の風でもホバリングは機体が頑張ってくれますが、移動時にはブレないようにきっちりとライン取りが出来るかが腕の見せ所で勝負です。

(1) スクエア飛行(制限時間8分) 

ア 機首を前方に向けて離陸を行い、高度3.5メートルまで上昇し、5秒間ホバリングを行う。

イ 試験員が口頭で指示する飛行経路及び手順で直線上に飛行する。機体の機首は常に進行方向を向いた状態で移動をする。

ウ 移動完了後、着陸を行う。

※ 飛行移動経路
離陸後180度転回してA地点、90度左転回してB地点、90度左転回してC地点、90度左転回してD地点、90度左転回してE地点、90度左転回してA地点に戻り、90度左転回して離陸地点上空に戻って着陸

(2) 8の字飛行(制限時間8分) 

ア 機首を前方に向けて離陸を行い、高度1.5メートルまで上昇し、5秒間ホバリングを行う。

イ 試験員が口頭で指示する飛行経路及び手順で、機体の機首を進行方向に向けた状態で、8の字飛行を連続して同一方向に二周旋回する。

ウ 8の字飛行完了後、着陸を行う。 円直径は約5メートル。

(3) 異常事態発生時の飛行(制限時間6分)           

ア GNSS、ビジョンセンサーOFFの状態で機首を前方に向けて離陸を行い、高度3.5メートルまで上昇し、5秒間ホバリングを行う。

イ 試験員が口頭で指示する飛行経路及び手順で直線上に飛行する。機体の機首は常に前方を向いた状態で【左右側方への移動】を行い続ける。

ウ 試験員から、【緊急事態発生!直ちに着陸せよ!】指示を受けて、最短の飛行経路で指定された緊急着陸地点上空に移動して着陸を行う。

3 判定基準

(1)  試験員の指示された飛行経路及び手順であること。

(2)  飛行経路を維持し、飛行経路から1.5メートル以上逸脱しないこと。

(3)  操作は柔軟円滑であり、急激な操作を行わないこと。

(4)  飛行経路及び高度が大きくふらつかないこと。

(5)  適切な速度を保つことができること。

(6)  所定の範囲で、安定したホバリングを行うことができること。

(7)  所定の範囲に安全な着陸を行うことができること。

(8)  所定の制限時間以内に、飛行を完了させること。

4 減点基準

(1)【不合格】

・危険な飛行・墜落、損傷、制御不能・不合格区画への進入・制限時間超過

・試験員による操作介入・不正行為

(2)【5点減点】

・飛行経路逸脱・指示と異なる飛行・離着陸不良・監視不足・安全確認不足

(3)【1点減点】

・ふらつき・不円滑・機首方向不良

5 採点

 持ち点100点からスタートする減点方式で、二等は70点以上の持ち点を残すことで合格になります。

6 おわりに

当校では、これまでに約30人の二等実機試験を実施しておりますが、受験生の皆様は、とても真剣で緊張されております。試験官は、最初の離陸状態を見ただけで受験者の緊張度が分かりますが、試験が始まると一切アドバイスをする事は出来ません。

また、試験官が求めているのは、前述した実地試験実施細則に定める操縦技術はもちろんのことながら、離陸前や飛行全般を通じて必要な安全確認が十分に行われて試験官に報告されることもとても重要になります。自動車免許検定と同じで、いくら運転が上手でも安全確認が不十分であれば不合格になることと同様です。十分に落ち着きながら元気な声で申告し、両スティックを力み過ぎずにきちんと保持して慎重にゆっくり飛行させることが合格への栄冠に繋がると思います。

今回の写真は、樹木を避けながら飛行訓練中のマトリス350です。