国家資格実地試験にチャレンジ(総括編) 宮田 敏美

【JDAドローンマガジン 2024年10月16日掲載】

皆様こんにちは。JDA北海道ブロック 根室より宮田です。

1 はじめに

皆様こんにちは。これまで3回の連載で二等無人航空機操縦士の実地試験全般について解説しました。今回は、約1年間に亘って数多くの修了審査を開催した中で、特に受験者様の減点が多かった点や、審査員として感じた事柄等をお話し致しますので、国家資格にチャレンジされる皆様方の参考になればと思います。試験内容は、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課から発出されている二等無人航空機操縦士実地試験実施細則と実施基準に基づきますので、先ずは熟読して下さい。

2 机上試験

机上試験は、主に飛行計画(フライトプラン)等に関係する問題ですが、飛行させる機体の飛行性能を諸元で確認することが前提です。設問に指定された飛行ルートや飛行開始時の気象環境等の中で、特定飛行を行う場合に必要となる飛行許可や飛行ルートの環境等で留意すべきことが求められます。また、電波伝達に影響を及ぼす工作物には日本全国で差違が見受けられましたので、少し深読みすることも必要です。4択で4問出題されますが、明らかに違う項目を取り除きますと答えにたどり着くと思います。1問5点ですので、減点は大きいです。

3 口述試験

 (1)  口述

審査員からこれから実技試験を行う飛行空域、周辺状況、天候、風速、受験者の体調等に問題が無いかついて口頭で質問されます。受験者は、法令批判になる状況はないか、飛行の安全を確保するために必要なチェック項目を簡潔明瞭に口頭で回答します。

 (2) 飛行前点検

ア 作動前点検

点検表が渡されますので、各点検項目の作動前点検をしますが、何を点検しているのか審査員に分かるようにはっきりした動作と声で行って下さい。また、審査員の指示に従って実施年月日、機体の登録番号、実施場所を記入します。

イ 動作点検

動作点検は、審査員の了承を得てプロポ(操縦装置)、機体の順で電源を入れて電源系統をチェックします。次に通信系統のチェックを行いますが、特に、モード確認は自分の操縦モードになっているかを確実に確認することが重要です。コード変更が必要な場合は審査員に申告して切り替えを行って下さい。これはとても重要で、モード確認を怠ればその後の審査が成立しません。その後、バッテリー残量、リモートIDの呼称を行います。モニターや操作方法等で分からないことがあれば、遠慮しないで審査員に質問して確認して下さい。

ウ 飛行点検

周囲の安全を報告後に機体を離陸させ約1.5メートル地点でホバリング状態にしてから自動制御系統をチェックします。具体的には、スティック操作どおりに機体が作動するかをエルロン、ラダー、スロットル、エレベーター操作の異常なしを声を出してチェックした後に着陸します。点検した項目を点検表「日常点検記録簿」に記録します。

4 実技試験

実技試験は、目視内でスクエア飛行、8の字飛行、異常事態発生時の飛行の順で行います。審査員から具体的な説明がありますので、良く分からない事があれば、遠慮しないで聞き直して下さい。減点が多い箇所を列挙しますと、

(1) スクエア飛行

進行方向に頭の向きを変えて進行しますが、きちんと左90度にエルロン操作を行う事が重要です。

・エルロン操作が不十分だと、直ぐに斜飛行になってしまいます。慎重にゆっくり左90度に方向転換して下さい。

・斜飛行に気が付いたら、直ぐに軌道修正を行って下さい。 

・特に、C地点からD地点への移動は、飛行距離が長くて注意が必要です。

・一般的に飛行速度が早すぎます。早いと小さなミスが大きくなります。 

不用意に一旦停止しないこと。普段の練習から気を付けましょう。

・スティックから指を離してしまう。癖になっているかも? 

・最後の着陸時の安全確認を忘れてしまう。

  (2) 8の字飛行

審査員は、飛行が開始されると受験者の操縦技量が直ぐに分かります。

前進と回転軸のスティック操作が丁度良く合致してスムーズな円回転が描けます。ゾーンに入るとスティック操作の必要がない位に綺麗に飛行します。その感じを体得して下さい。若干のズレが生じた場合は、うまくラダー操作を入れて軌道修正して下さい。

・飛行速度が速すぎます。ゆっくり飛行が大きなミスを防ぐコツです。

・不用意に一旦停止しないこと。しかし、ミスを最小限に抑えるためには時として一旦停止も必要と心がけること。

・機体の向きが左右・対面時になったときにスティック操作が混乱してパニック状態に陥ってしまい方がおられます。誰もが通る道ですが、普段の練習から、頭の中、心の中で

「もっとゆっくり・ゆっくり・右・右・前・前・左・左」

と自分に言い聞かせながらスティック操作を行う事がとても効果的です。最後のここでも着陸時の安全確認を忘れないようにして下さい。

(3)  異常事態発生時の飛行

・高度を維持することを失念してしまいがちです。気を配りましょう。

・特に、緊急事態が宣告されて最短距離で着陸地点に移動する時に、高度が下降したり、左右に振ら付いてしまうことが多いです。

・ここでも最後の着陸時の安全確認を忘れてしまう。

この様に、減点が多い箇所を列挙しましたが、共通することは、繊細なスティック操作を行っている中で、若干の修正が必要になった時に飛行速度が早すぎて大きなミスを招いてしまうことです。制限時間をオーバーしてしまう受験生はおられませんでした。減点を最小限に抑えるためには、ゆっくりと一定速度で飛行することが大切です。

5 口述試験

(1)  飛行後点検

飛行前点検と同様に各項目をチェックして飛行記録に記入します。飛行後は、飛行後点検結果にも記入します。飛行記録の記載漏れは減点が大きいので注意して下さい。

 (2) 事故、重大インシデントの報告と対応に係る審査

審査員から事故、重大インシデントに関して口頭で質問されますので、受験者は必要事項を全て口頭で回答します。

・無人航空機の事故とは

・無人航空機の重大インシデントとは

・無人航空機に関する事故が発生した場合の措置

は全て覚えて、全て回答しましょう。減点が大きいのでしっかり覚えて下さい。

6 おわりに(総論)

以上が二等無人航空機操縦士の実地試験の内容です。受検される皆様方へのアドバイスですが、前回と重複しますが、審査員が求めることは、操縦技術はもちろんのことですが、無人航空機の操縦者としての基本原則である【安全は全てに優先する】ことが審査全般で体現されているかです。

離陸前や飛行全般を通じて必要な安全確認が十分に行われて、【簡潔明瞭】に報告が成されることがとても重要になります。十分に落ち着きながら元気な声で報告し、両スティックを力み過ぎずにきちんと保持して慎重にゆっくり飛行させることが合格への栄冠に繋がると思います。

  • 飛行前後の点検では、どの部分を点検しているのか、きちんと指で触れて示して、目で直視し「モーター異常なし」と申告しましょう。
  • 審査員から課題が示された場合は、「はい、○○を実施します!」と元気に復唱してから動作を開始しましょう。理解できなかった場合は、「もう一度お願いします」と再確認しましょう。
  • 実機試験では、繰り返しになりますが、皆さんスピードが早すぎる傾向があります。制限時間は結構長いものです。これまでに時間切れで不合格になった受講者はおりません。
  • 8の字飛行では、特にスピードの出し過ぎに注意しましょう。スピードが早いと僅かなスティック操作の誤差が大きなルート逸脱を招いてしまい、軌道修正が難しくなります。
  • プロポは両手で正しく持つことが基本です。また、両スティックも正しく保持します。途中で片手を離したり、スティックから指を離す、スティックを指で弾く様な操縦方法は厳禁です。ついつい癖が出てしまいますので、普段から意識して正しく操縦する訓練を身に付けることが大切です。

実地試験の解説は以上になります。学科試験を先に合格された方もおられると思いますが、先に実地試験を受ける際にも学科試験の出題範囲である教則をしっかり勉強してからチャレンジする必要があります。皆様の合格を祈念致します。 

今回の写真は、当スクールで新しく修了審査用機体として申請したEVOⅡのオーバーライド時の写真です。