『無人航空機の飛行の安全に関する教則(第4版)』の解説 宮田 敏美

【JDAドローンマガジン 2025年3月19日掲載】

こんにちは!JDA北海道ブロック 根室より宮田です。

今回は、2025年2月3日に国土交通省航空局から発表されました「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第4版)」についてお話しします。

この教則は、2022年9月に初版が出され、その後2022年11月と2023年4月に改訂を経て、今回で改訂第4版になっております。この教則は、ドローン等の無人航空機を安全に運用して飛行させるために必要となる基本的な知識やルール等をまとめたものです。一等・二等の国家資格技能証明の学科試験は、この教則から出題されますので、最新版の教則をしっかりと学ぶ必要があります。ドローン等を飛行させることは、常に墜落や衝突等によって第三者の生命、身体、財産に被害を及ぼす虞がある危険な行為であることを認識し、これを防ぐための教則ですから。技能証明の取得を目指さない方も同様で、全ての操縦者が、しっかりと学んで「安全は全てに優先する」心構えを持つことがとても重要です。

【法の不知】いわゆる「この様な法律、ルールがあることは知らなかった。」は、全く通用しない大きな責任を有することなのです。

1 教則の改訂要旨
 (1) 捜索又は救助のための特例適用の明確化
 (2) 第三者及び第三者上空の定義の見直し
 (3) レベル3.5 飛行の追記
  ア レベル3.5飛行
  イ レベル3.5飛行の位置付け
  ウ レベル3.5飛行の実施に求められる安全確保体制等
 (4) 行政処分等基準の追記
 (5) 無線局免許手続規則の一部改正の内容反映

2 解説
 (1) 捜索又は救助のための特例適用の明確化
国または地方公共団体及びこれらから依頼を受けたものは、事故や災害等に際し、捜索または救助を目的として無人航空機を飛行させる場合には、特例として飛行の空域及び飛行の方法(特定飛行)に関する規制が適用されない。としており、この特例に該当するケースとして、以下を例示しています。
  ア 大規模災害発生時の捜索または救助
  イ 被災地の孤立地域等への生活必需品の輸送
  ウ 危険を伴う箇所での調査・点検
  エ 住民避難後の住宅やその地域の防犯対策のための無人航空機の飛行
※ 特例飛行に関連する文書として、「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」や「運用ガイドライン」も公開されておりますので参考にして下さい。
※ また、国または地方公共団体に関わらない独自の飛行活動は、特例の対象にはならず特定飛行の飛行許可・承認が必要となりますが、緊急用務空域が発令された場合は、飛行許可・承認を得ていても飛行禁止になりますので注意が必要です。

 (2) 第三者及び第三者上空の定義の見直し
  ア 第三者
    第三者に該当するケースとして、以下を例示しています。
  ・ 映画の空撮における俳優やスタッフ
   ・ 学校等での人文字の撮影における生徒
  イ 第三者上空
    第三者の上空を指しますが、移動中の車両等(自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン等)の上空を含むとしています。
※ 移動中の車両等ですので、移動中でない車両等の上空は該当しません。また、第三者の真上だけではなく、飛行中のアクシデントで墜落、落下が生じる場合は、飛行中の速度や風力等の影響によって危険が生じるエリアも拡大する訳ですが、そのエリアも第三者や第三者上空と見なしますので、慎重な判断が必要です。
※ 第三者上空に該当しない場合
・第三者が遮蔽物に覆われていて保護される状態にある場合(建物や移動しない車両等の内部に第三者がいる場合等)
・移動中の車両等に第三者がいる場合で、レベル3.5飛行として一時的にこの移動中の車両等の上空を飛行する場合

 (3) レベル3.5飛行の追記
レベル3.5飛行は、レベル3飛行の安全対策として求められる補助者の配置や看板の設置等の立入管理措置を機上カメラで安全確認を行うことで第三者の上空や走行中の車両や鉄道等の上空の横断を容易にするために新設されましたが、
※ 第三者の上空の飛行を認められた訳ではなく、迂回措置を講じること。
※ あくまで道路や軌道敷地を一時的に横断しようとする場合に進行中の車両等
があった場合は一旦ホバリングして通過を待って安全を確保することです。
※ 立入管理措置のうち、補助者の配置や看板の設置等を機上カメラでの確認に代替えするものであり、立入管理措置が不要となるものではありません。
※ レベル3.5飛行制度については、
・前記の安全体制を確保すること。
・操縦者は国家資格技能証明を保有していること。
・飛行機体に賠償責任保険に加入していること。
が条件になっておりますので、詳細については航空局の資料を確認して下さい。

(4) 行政処分等基準の追記
航空法の刑事罰に付随して行政罰が明文化されたもので、その基準は、第三者への被害程度や違反行為の悪質性や危険性の軽重等によって点数が区分され、行政処分が公正かつ適切に行うために必要な基準が定められました。操縦者として安全飛行に必要な注意義務を怠ったことへのペナルティーであり、結果として、人の生命に関わる悪質性、危険性、事案の重大性が高い違反ほど高減点されて免許取り消し又は免許停止の行政処分が科せられることなったということです。
※ 車両の点数制度の悪質なひき逃げや酒酔い運転は取り消し処分と同様です。

(5) 無線局免許手続規則の一部改正の内容反映
無人航空機に用いられる無線設備に、携帯電話(4G、5G)が追加されました。
携帯電話が使用する周波数帯や最大送信出力等が教則に追記されています。

3 まとめ
その他に改正された点やこれから注意が必要なこととして、
 (1) 飛行許可、承認申請
  ア 申請では、審査基準に適合することを証明するための資料添付が、機体と操縦者に関する証明や資料の添付が簡素化または不要。
  イ 10時間以上の飛行実績など、基準適合性を「適」「否」で入力。
  ウ 機体やプロポの写真、取扱説明書、追加基準の証明資料の添付不要。
  エ 2025年3月16日までに申請した場合でも、補正指示が入った場合は、2025年3月24日以降に新規申請が必要となります。補正申請は出来ません。
  オ 2025年3月24日より以前に取得した飛行許可についても、変更申請や更新申請ができないため、新規申請が必要になります。
 (2) DIPSシステムの改修
ドローンの飛行許可申請に対する許可承認手続き期間の1日化を目指すべく、「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」が改正され、DIPS2.0のシステムも改修されます。

以上のように、今回の改正は多岐に亘りますので、航空局HPに公開された資料を参考にして、しっかりと理解することが大切です。