地域の特性を生かしたドローンの普及拡大に向けて 宮田 敏美

【JDAドローンマガジン 2024年2月28日掲載】

皆様こんにちは。JDA北海道ブロック 根室より宮田です。

1 はじめに

今回は、CHASING(チェイシング)グループの一員として、水中ドローンを取り巻く現状と今後の可能性についてです。まず、最初に共通認識として理解して頂きたいことは、日本の人口は急激に減少を続けており、人口ビジョンでは、僅か30年で2000万人が減少して、一億人を割ってしまうと発表されました。

2 労働力のIT・ロボット化

人口の減少は、労働力の減少、生産性の低下を経て経済の衰退に直結します。そのために働き方改革が進められ、あらゆる職種で人間に変わる労働力としてスマート事業が推進してAI、ロボット化が台頭していることです。

私たちの身近かなものでは空中ドローンです。8年前に航空法が改正されて黎明期から一躍に成長期に入り「空の産業革命」と言われ、現在も大きな躍進を続けております。

3 水中ドローンの躍進

水中ドローンも同様で、空中ドローンが躍進を続けた土台を踏襲して、僅か数年間で「海の産業革命」と言われるまでに大きく成長しました。知床の海難事故や太平洋沿岸の甚大な赤潮被害をはじめ、地震、津波災害発生時の行方不明者捜索活動や被害状況調査、橋脚やダム、港湾維持等の公共インフラ点検などにも、潜水士や海難レスキュー隊の活動を補助する最先端機器として期待されております。

4 水中ドローンの解説

水中ドローンの操縦は、空中ドローンの目視外飛行のイメージにとても似ております。機体先端に装備されている高感度カメラから送られてくる映像を操縦機に取り付けた携帯、タブレット画面で確認しながら操縦します。操縦も二本のスティック操作でクラスター(スクリュー)の動力を変えて自在な動きが出来ることも同じです。大きな違いは有線(テザー)伝達ですが、最大のメリットは不測の場合でも墜落しないことです。また、高感度カメラと高照度ライトは、水質が多少濁っていても人間の目視を超えるもので、水深200メートルを超える機体もあります。

5 水中ドローンの法律

空中ドローンは、平成27年に航空法が改正して特定飛行の許可承認制度が示され、更なる発展のために国家資格制度が確立しました。水中ドローンは、現在のところ特定法はありませんが、海上交通三法の他、河川法等を遵守することが求められ、実際の運用には管轄する海上保安庁への報告が必要になります。また、特定港湾にも独自のルールが示されており、関係法令に抵触する違反行為は、罰則が科せられることになります。

6 水中ドローンの利用

水中ドローン市場は、年間10%以上に急成長しております。CHASINGは、ここ数年で、機体の小型化、高性能化と比較的安価のラインアップが図られ、趣味から本格的な産業用にでも日本だけでなく世界各国の市場で高いシュア率を誇っております。とても美しい水中カメラ映像は、これまでに見ることが叶わなかった領域を自らの操縦で自由に見られる感動と好奇心を十分に満たしてくれます。お勧めしたい機種は、産業用としても利用可能なCHACING M2」「CHACING M2PRO」「CHACING M2MAX」です。

海流が早い海域では、伸ばしたテザーケーブルに大きな抵抗を受けるのですが、全機種でクラスター(スクリュー)が8基装備されておりますので、力強い推進力が得られます。空中ドローンのクワットコプターとオクトコプターの風への強さの違いと同様です。また、多彩なオプションの取り付けにより、海中、海底の物体を掴む、引っ張る等のさまざまな水中作業が効率的に行える点が大きな魅力です。

7 おわりに

皆様方は、既に空中ドローンのスキルをお持ちのことと思います。時代の流れで、空中・水中の両ドローンが、僅か数年間で「空の産業革命」、「海の産業革命」と躍進を続けた訳です。私は、日本最東端の北海道根室市で空中・水中ドローンスクールを開校しております。これまでの7年間で数多くの卒業生が各分野で活躍しておりますが、ここで強調したいことは、空中・水中ドローンは別個に分けて使用する考えではなく、両方を融合させ、同時活用することで、その利用効果が何倍にも高まりを見せることです。今後も人間に変わる大きな労働力として進展を続けて行くことと思います。

今回は、昨年の防災訓練に参加して、多くの市民の皆さんに水中ドローンの体験操縦をしていただいた写真です。操縦機とモニターやプロジェクターにHDMI接続することで、映画館のような大画面の迫力ある映像を共有することも可能になります