地域の特性を生かしたドローンの普及拡大に向けて 宮田 敏美

【JDAドローンマガジン 2022年8月14日掲載】

皆様、こんにちは。根室支部の宮田です。

地域の特性を生かしたドローンの普及拡大に向けて 続編

1 北海道知床沖で発生した海難事故を踏まえて

令和4年4月23日、世界自然遺産である北海道知床半島沖合において発生した小型旅客船の沈没事故で、乗員、乗客26人が遭難し、8月8日現在で14人が死亡し、いまも12人が行方不明となっております。これは、今世紀国内最大の海難事故であり、事故発生直後から北海道や北海道警察等のヘリコプターが空から捜索を行った他、海上自衛隊や海上保安庁も地元漁業関係者と連携して、これまでに延べ500隻以上に亘る大捜索を展開し、現在も継続されております。まずは、御家族、関係者の皆様方に 衷心よりお見舞い申し上げます。

2 驚きの徒歩検索

  知床半島は、ヒグマの大量生息地で、沿岸から遡上する鮭を捕獲する勇猛な姿が遊覧船上から観覧することが出来る人気コースで、その遭遇率は実に90パーセントを誇ります。このサファリパークの様な危険なエリアを警察官は行方不明者が海岸線沿いに漂着していないか広範囲に亘って徒歩による捜索を行いました。熊避け鈴と撃退スプレーだけを携行するという脆弱極まりない装備で命がけの捜索活動でした。

この様に何時如何なる時も大災害や大規模事故が発生した際に我が身の安全を省みることなく命がけで捜索される警察官、自衛官、消防官の真摯な姿には唯々頭が下がる思いです。

3 災害現場でのドローン活躍の期待  

今回の悲惨な人的事故の発生から地元では、『どうしてドローンを使わないのだろう?』と、危険現場におけるドローンの効果的活用の声が高まっております。既に、全国的には活用事例が数多くあることと思いますが、国や地方公共団体がドローンを飛行させるだけに止まらず、民間の私達が災害や事故現場において被害状況の調査や行方不明者の捜索活動に参加することが出来るように、全国各地域で飛ばすためのルール作りが進んで行くことが強く望まれます。

4 立ちはだかる『緊急用務空域』

  2015年12月に初めてドローン条項が新設された改正航空法は、施行後の経過年数が浅いことから、新設当時は予想していなかった、その時々にドローンが引き起こす各事象によって、新たな条項や規則、細則、実施要領等が示されました。これは、ドローン操縦者がルールやモラルを守らなかったために、新たなルールとして示されたもので、ドローンの更なる推進を図る事も相俟って『推進と安全と規制』がバランス良く保たれながら、さらにより良く進んで行くものと思います。その中に、2021年6月の追加された『緊急用務空域』が有ります。これは、大規模な山火事でヘリコプターによる消火活動がドローンの飛行によって妨害された事案に起因しており、当然に必要な規制と言えます。 

この様に、ドローンパイロットに必要なコンプライアンスが失われたときに、新たな問題が生じて、新たなルール作りが行われ、新たな許可申請項目の追加に繋がって行きます。

緊急用務空域の新設が、官民一体が連携したドローン飛行による行方不明者捜索活動等を推進して行く上でハードルが高くなってしまったと感じますが、視点を変えると、むしろ連携を進める上で必要な各種事項を示していただいたと解釈出来ます。

緊急用務空域でドローン飛行許可申請を行う場合の地元自治体や警察との事前協議や安全飛行体制の確保など、新たなドローンに普及拡大に向けた問題点をどの様にクリアしていくのかを次回でより迫って行きたいと思います。知床捜索に加わった掃海艇『父島』と潜水艇の写真を添付します。