現況を語る ~ハンティングドローンによる有害鳥獣の追い払い~ 久保 正樹
【JDAドローンマガジン 2025年10月29日掲載】
皆さんこんにちは。日本ドローン協会 和歌山事業所のMonkey こと久保です。
今回のテーマは
現況を語る ~ハンティングドローンによる有害鳥獣の追い払い~
ハンティングドローンについては、ドローンマガジン「未来を語る ~未来の狩猟の世界~」でもご紹介しましたが、スピーカーによる犬の鳴き声と駆逐用煙火が発射できるつくりになっており、山の上空から獲物を脅す狩猟での勢子の役割を行ったり、有害鳥獣の追払いに活用できるドローンです。

7月12日 紀美野町でのサルの追い払い要請
紀美野町産業課より依頼を受け、4名体制で出動。
ハンティングドローンのパイロット、補助者、ほか2名は山に入り追い立てた。
サルは目撃情報があってすぐに出動しないと現在どこにいるかの特定が難しいため、現在いる可能性の濃厚なところを3か所にしぼり、飛行させる。
その後、サルの目撃情報は一旦とまる。
7月30日 紀美野町でのサルの追い払い要請 2回目
再び前回より上の方でサルの目撃情報あり。
紀美野町産業課より依頼を受け、2名体制で出動。
ハンティングドローンのパイロット、補助者は状況により、山に入り追い立てる形で出動。
前回同様、可能性の高いところを3か所飛行させる。
その後も場所を替え、猿は目撃されている。
今後について
猿の追払いは目撃後すぐに出動し、モノ(猿)を見ながら追払わないと人里が危険という認識を植え付けるのはむずかしい。
今後は紀美野町とも協議し、秋に多く目撃されるクマの追払いにハンティングドローンを活用する予定となっている。
和歌山市からの依頼で8月よりハンティングドローンによるカワウの追払いが始まる。
8月4日 和歌山市六十谷水管橋でのカワウの追い払い。
1回目9時 ハンティングドローンの製造社のアエロジャパンより応援もありパイロット志村さんに飛行いただいた。
53羽のカワウを追い払う。
一斉に飛び立つ様子は圧巻であった。
これにより当分害鳥は帰ってこないのではと推測したが、11時ごろ水管橋の前を通る際に3羽カワウがいることを確認する。
2回目12時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
3羽のカワウを追い払う。
3回目16時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
37羽のカワウを追い払うも、すぐに20羽ほど戻ってきたため再度飛行し追い払う。
次回飛行の際には補助者の位置を橋の上に変更し、携帯電話をつなぎ、イヤフォンで連絡を取りながら、指示しやすいような配置に変えようと考えています。
飛行させる時間に関しても現時点では隔週の飛行なのであまり影響はないかもしれませんが10月以降の毎週飛行になった際は、ランダムに時間帯をかえてもいいかもしれません。
8月18日 和歌山市六十谷水管橋でのカワウの追い払い 2日目。
1回目9時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
69羽のカワウを追い払う。
2回目12時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
20羽のカワウを追い払う。
3回目16時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
97羽のカワウを追い払うも、やはり夕方のカワウは戻りが早い。20羽ほど戻ってきたため再度飛行し追い払う。
今後の方法として飛行の方向を変えてみてもいいかもしれません。
理由①スピーカーをカワウに向ける方向で飛行させる方がカワウが狙われていると印象付けれると考えられるため。
理由②1回目の飛行と3回目の飛行では逃げていく様子に少し変化が感じ取れたため、飛行の方向なども単調にならない方がよい思う。カワウ自身がドローンに慣れてくる可能性があるので変化をつけてもよいと感じた。
また2回目の飛行終了後に水道局の担当の方から、ドローンのスピーカーからの音声を犬の鳴き声ではなく、猛禽類の鳴き声にしてみてはどうかとの提案を受け、猛禽類での音声で次回飛行させようという流れになりました。
9月9日 和歌山市六十谷水管橋でのカワウの追い払い 3日目。
1回目9時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
猛禽類の威嚇の音声をスピーカーから出し95羽のカワウを追い払う。
やはり朝は夕方とは違いすぐに飛び立っていくようだ。
2回目12時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
11羽のカワウを追い払う。
水管橋横の道路から見ると反対側の道路の下のさらに奥にカワウがいるのが確認できた。
3回目16時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私(一部私が飛行)の2名で出動。
124羽のカワウを追い払うも、やはり夕方のカワウは戻りが早いことと、お昼の飛行の際に見えた反対側の道路のさらに奥の河原に逃げていくカワウもおり、そこのカワウがすぐに戻ってきているようだった。再度、飛行経路を変更しスピーカーをカワウに向ける進行方向で飛行し、追い払う。
もしドローンが2機あれば、奥側の河原でも同時に追払いができれば効率も効果も上がりそうだと思った。すぐにもう1機ハンティングドローンを購入することは難しいが、ファントムに小型スピーカーをつけて飛行させるのであれば各所に追加申請すれば実施できそうだ。
今後のさらなる課題として、駆逐煙火の使用も相談したが、河川を汚す可能性などもあり、難しそうなため、音声に銃声も入れてもいいかもしれません。
9月22日 和歌山市六十谷水管橋でのカワウの追い払い 4日目。
1回目9時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
猛禽類の威嚇の音声をスピーカーから出し121羽のカワウを追い払う。
やはり朝は夕方とは違いすぐに飛び立っていく。
2回目12時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
40羽のカワウを追い払う。
3回目16時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私(一部私が飛行)の2名で出動。
109羽のカワウを追い払うも、前回同様やはり夕方のカワウは川上に逃げない。反対側の道路のさらに奥の河原に逃げていくカワウがほとんどで、そこのカワウがすぐに戻ってきているようだった。再度、飛行経路を変更しスピーカーをカワウに向ける進行方向で飛行し、追い払うも奥の河原に逃げていく。
飛行に関する9月までの考察提言
通常の山にいるカワウであれば、人の声や金属音も嫌うようですが、道路の近くで人や町中の騒音に慣れてしまっているため人を見るだけで逃げることもありません。
もともとスピーカーからの音声も大きすぎると住民や交通の妨げになる恐れがあるということで、はじめの方は音量をしぼっていましたが、意外と交通の音が大きく、スピーカー音が小さく感じられたため上げていってる状態です。
猛禽類の威嚇の声に銃声を合わせることでより効果が出るかもしれません。
カワウについていろいろ調べてみると、追払いを人がする場合でも
①ドローンを使って追払う(違う場所に一旦逃げていく)
②ドローンを飛ばさない日程は、猟友会の格好と鉄砲に見立てたものを持ち、追い立てるとはじめは逃げていく。
③そのうち慣れて逃げなくなる。そこに猟友会に来てもらって撃ってもらう。
④また猟友会の格好と鉄砲に見立てたものを持ち、追い立てると逃げていく。
⑤釣り糸を張り巡らせることでカワウから見えないものが体に触れることで嫌がり来なくなる。
⑥定期的にドローンを使って追払う。
などを繰り返し行うことでカワウが、いつかなくなるように仕向けることもできるようですが、今回の依頼場所では、まず③の撃つという行為ができないため、そこが難しい。
夕方の追払いの際は、一気に逃げずに川の水面に留まるものもいるため、網で捕獲してカワウから見て仲間が捕獲される恐怖を感じさせる等が必要になってくると感じた。
捕獲して後に逃がす場合でも網猟の範囲になるのか、ならないのかはわかりませんが・・・
または、他の場所で撃ったカワウを剝製にしてドローンからぶらさげ、カワウに見せつけることで恐怖を植え付けるなどであれば実現が可能かもしれないと思った。
畑にカラスの死骸をつるすなど行うことで、カラスよけになるためカワウでも可能性はあると思う。
また、暗くなると飛行しないと仮定すると日の入り直前にドローンを飛行させることもカワウには効果が出るかもしれません。
毎週1日3回の飛行より、連続して毎日飛行させる方が嫌がるかもしれませんし、これからも試行錯誤しながら対策を練っていこうと思います。
10月6日 和歌山市六十谷水管橋でのカワウの追い払い 5日目。
1回目9時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
猛禽類の威嚇の音声をスピーカーから出し238羽のカワウを追い払う。
やはり朝は夕方とは違いすぐに飛び立っていく。
2回目12時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
今回は、猛禽類の威嚇の音声と銃声をスピーカーから出し41羽のカワウを追い払う。
3回目16時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私(一部私が飛行)の2名で出動。
今回も、猛禽類の威嚇の音声と銃声をスピーカーから出し202羽のカワウを追い払うも、前回同様やはり夕方のカワウは川上に逃げない。反対側の道路のさらに奥の河原に逃げていくカワウがほとんどで、そこのカワウがすぐに戻ってきているようだった。再度、飛行経路を変更しスピーカーをカワウに向ける進行方向で飛行し、追い払うも奥の河原に逃げていく。
10月14日 和歌山市六十谷水管橋でのカワウの追い払い 6日目。
1回目9時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
10月6日の1回目同様、猛禽類の威嚇の音声をスピーカーから出し209羽のカワウを追い払う。
やはり朝はすぐに山の方に飛び去っていく。
11時に水管橋の横を通る際に一羽もカワウを見なかった。
2回目12時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
11時には1羽もいなかったが12時には215羽もたかっていた。
すべてのカワウを追い払う。
今回は夕方と同じように川面に止まるカワウが多かったため、追尾して追払うも反対側の道路のさらに奥の河原に逃げていく。
3回目16時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私(一部私が飛行)の2名で出動。
261羽のカワウを追い払うも、前回同様やはり夕方のカワウは川上に逃げない。
川面に止まるカワウが多かったため川面のカワウをさらに追払う。
それでも反対側の道路のさらに奥の河原に逃げていくカワウがほとんどで、そこのカワウがすぐに戻ってきそうだったため少し時間を置く。やはりカワウが戻ってきたため2度目の飛行を実施、川面に逃げたカワウもさらに追払う。合計4回繰り返しいつもより戻ってこない状態になったため撤収した。
飛行に関する考察提言
もしかしたら1日中河原て待機しカワウが来るたびに飛行を行うということを1週間連続で行うなどすれば、カワウは衰弱し、別の場所に移動する可能性はあると感じた。
10月21日 和歌山市六十谷水管橋でのカワウの追い払い 7日目。
1回目9時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
10月14日の1回目同様、猛禽類の威嚇の音声をスピーカーから出し324羽のカワウを追い払う。
2回目12時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
關本さん到着時には1羽もいなかったが12時には276羽もたかっていた。
すべてのカワウを追い払う。
今回は夕方と同じように川面に止まるカワウが多かったため、追尾して追払うも反対側の道路のさらに奥の河原に逃げていく。
3回目16時 パイロット關本さん、記帳兼補助者が私の2名で出動。
猛禽類の威嚇の音声と銃声をスピーカーから出し346羽のカワウを追い払うも、前回同様やはり夕方のカワウは川上に逃げない。
川面に止まるカワウが多かったため川面のカワウをさらに追払う。
それでも反対側の道路のさらに奥の河原に逃げていくカワウがほとんどで、そこのカワウがすぐに戻ってきそうだったため2度目の飛行を実施。
飛行に関する考察提言
やはり反対側の道路のさらに奥の河原でファントムに小型スピーカーをつけて飛行させることも試す価値はありそうだ。
水道局との話し合いも必要だが、昼の飛行分を夕方の飛行にまわし、夕方に2機のドローンを飛ばすように申請を準備しようと考えている。
カワウの追払いの様子を30秒のダイジェスト映像にまとめました。
QRコード

以上が現状のカワウ追払いについての報告です。
カワウの追払いに関しては、来年3月まで続きますので年度が替わったあたりでその後の現況の報告をできればと考えております。
次回の「Monkey 未来を語る」は未来にテーマを戻して語ってみようと思います。

